前回の記事では暗闇でのEOS R6の高感度撮影性能をテストしました。このときは基本的にワンショットAF+置きピンで撮影しましたが、今回はAIサーボAFを使って暗闇でどこまでAF撮影できるのかを試してみます。前回は芸備線でしたが、今回は呉線です。夕方、及び早朝の時間帯に走る列車のAIサーボ撮影を行い、ピントの合い具合を検証しました。
目次
撮影地
ポインターのある位置が立ち位置で、ここから南東を向いて撮影しました。ポインターが左上に来るように地図をスクロールしていただくと、線路は海岸線に沿って緩やかな曲線を描いているのがおわかりいただけると思います。立ち位置から列車迄の距離は手前が200m、一番遠くが400mくらいあり、サーボAFが働いているかどうかを試すのに格好の撮影地です。
昼間の景色はこんな感じです。
撮影結果
日の入り前にも撮影しましたが、光量が十分あってISO1000程度で問題なく撮影できましたので省略します。(ちなみに、上に掲載した写真はそのうちの一枚です)
今回の撮影は、マニュアルモード(M)かフレキシブルAEモード(Fv)で撮影しています。フレキシブルAEモードとは、EOS Rで新登場の撮影モードで、シャッター速度、絞り、露出補正、ISOのなかから任意の値を設定すると適正露出となるように(露出補正以外の)残りの項目を自動設定してくれるというものです。(詳細はこちらの記事をご参照)
今回わたしはシャッター速度と絞りを両方とも指定したので、ISO感度のみが自動設定されることになります。
1. 日の入り15分後
日の入り15分後ですが、あたりはずいぶん薄暗くなりました。列車の前照灯による白飛びを防ぐため-2段の露出補正をかけたものの、実際には白飛びするほどの光量ではありませんでした。
一枚目は列車の先頭が姿を見せたところ。
その後海岸線に沿って進行する列車をAIサーボAFで撮影続行。
列車の先頭が隠れる直前まできたところで終了。このときを含め、毎回35枚前後を撮影しました。親指AFをしながら連写モードではなくマニュアルでシャッターを切っています。
この写真の車両先端部を等倍切り出ししたのがこちら。ピントはよく合っています。
撮影時の状況(黄色部分)とカメラの設定(ピンク色部分)は下記の通り。AIサーボAFによるピント合わせは全ての写真でうまくいきました。前述の通り、シャッター速度と絞りを固定してFv撮影しましたので、ISO感度が変化しています。
2. 日の入り22分後
次は逆向きの列車なので後追い撮影となります。このときは列車の最後尾(赤い尾灯)が見えたところで撮影を開始。
このあと列車が進行して車両の先端が見えなくなりまでシャッターを切り続けました。
撮影した画像は①ピントがほぼ合っているもの、②ピントがややぼけているもの、③ピントがボケボケのもの の三種類が混在していました。途中で大きく外して③になったあと、もう一度②に戻りました。
① ピントがほぼ合っているもの
② ピントがややぼけているもの
③ ピントがボケボケのもの
枚数は、①が2枚、③が2枚で残りは全て②でした。これをまとめると下記の通りです。合焦枚数は①の枚数です。一部OKとはしましたが、実態はほぼNGと言えます。
3. 日の出約1時間前
ここからは翌朝の撮影です。このときは晴れていて星が出ていましたが、月はまだ出ていません。列車が来る時刻にはカメラを向けている東の空がぼんやりと明るくなり始めていました。とはいえ、ISO感度32000、シャッター速度1/200で写真を撮るとこんな感じで暗闇に街灯や海上の標識灯などがポツポツ写っています。実際肉眼で見える光景もこんな感じでした。
列車の写真の一枚目はこちら。列車の先頭部がこちら側に顔を出したところです。
このあと海岸線に沿って進みます。
そして最後の写真
それぞれの等倍切り出しは下記の通りです。いずれもピントはしっかり合っています。
1枚目
二枚目
三枚目
これをまとめると下記の通りです。全てピントぴったり。素晴らしい!!
4. 日の出15分前
ずいぶん明るくなってきましたが、列車が走る海岸線は山の陰なので暗いままです。画面左手に月が昇ってきました。
これが一枚目。しっかり合焦しています。
そしてここまでは良かったのですが・・・
次のコマからピントがずれてしまい、最後までこのままでした。
それぞれの等倍切り出しは下記の通り。
一枚目
二枚目
三枚目
状況をまとめると下記の通り。ピントが合ったのは32枚中10枚だけでした。
5. 日の出8分後
もはや問題なく撮影できる明るさですが、このときの列車は車内が既に消灯されており、画像としては前項の時よりもAFがしにくそうに思われました。
一枚目がこちら。わかりにくいですが、海岸線からちらっと前照灯が覗いています。
そのあと海岸の先端を回り込んで・・・
こちらに向かって走ってきますが、車内が暗いのでほとんど背景に溶け込んでしまっています。
等倍切り出しはこちら。
一枚目
二枚目
三枚目
結局、このときは全ての画像でピントがぴったり合っていました。
まとめ
- ほぼ暗闇で400mほど離れた場所からこちらへ向かってくる列車をAIサーボAFで正確にピント合わせできた
- 一方、200mほどの距離から走り去っていく列車に対してはAIサーボAFの成功率は半分以下だった
- この原因としては、①尾灯の色が赤いから ②尾灯の照度が前照灯と比べて低いから ③列車が離れる方向に走行しているからなどが考えられるが、今回の撮影結果だけでは何が原因かはっきりしない
- とはいえ、2.と3.、4.と5.の比較から②の可能性は低いと思われる。(2.は露出補正-1段だが、3.は適正露出に対して6段以上のマイナスとなっていた。また、4.より5.の方が列車自体の明るさは低いのにこちらの方が成績が良い。)
わかりにくいと思いますのでこれまでにご覧いただいた5つの表をまとめて再掲します。
このときのAIサーボAFの設定
Case1 汎用性の高い基本的な設定 を選択しています。(自動的に 被写体追従特性、速度変化に対する追従特性とも ±0 に設定されます)
その他の共通条件
- 撮影には三脚を使用しています
- 著作権マークの入った画像は全てRAWデータをレタッチ・トリミングなしでそのままJPG出力しています
なお、等倍切り出しの画像に若干圧縮ノイズが出ていますが、これはスニッピングツールによるキャプチャ画像を使用しているためと思われます。
以上、読んでくださりありがとうございます。